Microsoft Dynamics ERPの進化: AXからD365へ

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Microsoft Dynamics ERPは、1998年にリリースされて創業以来、長い道のりを歩んできました。Microsoft Dynamicsは、企業がビジネスプロセスの効率化、業務の最適化を主目的にプラットフォームの先頭を走ってきました。長年にわたり、マイクロソフトは、ビジネス環境の変化する需要に対応するため、ERPを継続的に進化させてきました。マイクロソフトのERPは、何度もバージョンアップを繰り返し、その都度、最新技術の導入と機能性や操作性を向上させてきました。このブログでは、Axapta(AX)から現在のDynamics 365(D365)に至るまで、Microsoft Dynamics ERPのその歩みや進化について紹介します。ERPソリューションに対する企業の取り組み方に変革をもたらした主な利点や機能、他のDynamics ERPの歴史と併せて紹介していきます。

Axapta (AX) 

Axaptaは、1998年にデンマークのDamgaard Dataという会社から発売されました。このソフトウェアは主に製造業や流通業向けに設計されたもので、その後2002年にマイクロソフト社に買収されました。この買収が、マイクロソフトのエンタープライズ(大企業)向けERP市場への進出の始まりとなりました。

Axaptaは、財務管理、サプライチェーン管理、生産管理などを中心に、ERPとして幅広い機能が評価されていた一方で複雑で導入が難しいという批判もありました。

Microsoft Dynamics AX(マイクロソフト ダイナミクスAX )

2006年、マイクロソフトはAxaptaの新バージョン「Microsoft Dynamics AX」を発表しました。このソフトウェアは、使いやすく、また簡単に導入できるように設計し直されました。また、ビジネスインテリジェンス(BI)や高度な業務ワークフロー機能などの新機能も提供されました。

Microsoft Dynamics AXは、特に製造業、商社・卸売業、流通業などの中堅・大企業で広く採用されました。また、このソフトウェアは多言語で提供され、世界中の企業が利用できるようになりました。

その後、マイクロソフトはDynamics AXの機能を更に強化し、成長し続けていきました。特定の産業やビジネスニーズに対応するために、度々新しいモジュールが導入されました。これらのモジュールには、財務管理、サプライチェーン管理、人事、プロジェクト管理を大幅に強化する機能などが含まれます。

Microsoft Dynamics AXの1つの強みは、マイクロソフトOffice、SharePoint、SQL Serverといった他のMicrosoft製品とシームレスに連携できることです。この連携により、企業内の異なる部門内でスムーズなデータ共有や同時作業が可能になりました。

2011年、MicrosoftはDynamics AX 2012をリリースし、ソフトウェアに大きな改善をもたらしました。このバージョンでは、役割ごと(ロールベース)のユーザーインターフェイスが導入され、ユーザーが簡単に操作して自分用の画面や特定のタスクを効率的に実行できるようになりユーザーの業務効率を上げる役割を果たました。更に新バージョンでは、ビジネスインテリジェンス(BI)とレポート機能の更なる強化、サプライチェーン管理の改善、グローバル機能の拡張などの追加がもたらされました。

マイクロソフトは、Dynamics AXをリリースするたびに、よりソフト自体や業務の拡張性を高め、刻々と変化するビジネスニーズに適応することに力をいれてきました。Dynamics AXは、なまた様々にカスタマイズしやすいオプション設定や機能などでも知名度を上げ、企業が独自のニーズに合わせてシステムを最適に設定することができるようになりました。この柔軟性により、複雑なビジネスプロセスや特定業界の商慣習やルールを持つ企業にとって、Dynamics AXは人気のあるERPソフトとなっていきました。

Microsoft Dynamics NAV(マイクロソフトダイナミクスNAV )

Microsoft Dynamics NAVは、Microsoft Dynamicsに属するもう一つのERPソリューションです。中小企業向けに設計され、同様に、財務管理、サプライチェーン管理、プロジェクト管理などの機能を提供しています。

Microsoft Dynamics NAVは、2002年にマイクロソフトに買収されたデンマークのソフトウェア会社Navisionによって開発されました。その後、このソフトウェアはMicrosoft Dynamics NAVとして再発売され、中小企業にとって最も人気のあるERPソフトの選択肢であり続けています。

Microsoft Dynamics NAVが力を入れたのことは、ユーザーが使いやすいインターフェースと強力な機能で、特定のニーズにも合わせた総合的な力を持ったERPソリューションを求める企業から多くの支持を集めました。Dynamics NAVは、さまざまなモジュールとユーザーが自分で簡易カスタマイズが可能な機能を提供し、財務管理の強化、業務の効率化、生産性の最適化を実現させています。

Dynamics NAVは、総勘定元帳、買掛金・売掛金、予算管理、固定資産管理など、強固な財務管理機能を提供し、企業は財務や日常業務取引の追跡と管理、正確なデータレポートの作成、商業ルール要件への準拠を確実に行うことができました。

Dynamics NAVのサプライチェーン管理機能は、在庫管理、調達、注文処理の大幅な効率化を進めていくことが可能です。ユーザーは購買プロセスを常に最適化し、在庫状況を的確に管理し、サプライチェーン全体業務も最適化することで、顧客の需要に迅速且つ効果的に対応することができます。

さらに、Microsoft Dynamics NAVは、プロジェクトの計画、実行、監視を効果的に行うためのプロジェクト管理機能を備えています。リソース配分、時間管理、コスト管理、プロジェクト共同作業を可能にし、プロジェクトを予算内に完了させることができます。

また、マイクロソフトOffice 365やSharePointなど、他のMicrosoft製品との連携にも対応しており、部門を超えたスムーズな作業工程やデータ共有が可能です。この統合により、生産性が大きく向上し、企業内の効率的なコミュニケーションが促進されました。

マイクロソフトは長年にわたり莫大な資本を投下し、Dynamics NAVの開発・改良に力を入れ続けてきました。新バージョンでは、業務機能の強化、システムパフォーマンスの向上、製造機能の拡張などが行われました。これらのアップデートにより、企業は変化する業界のニーズに対応し、最新の技術を活用することができるようになりました。

Microsoft Dynamics GP(マイクロソフト ダイナミクスGP )

Microsoft Dynamics GPは、マイクロソフトのエコシステムの中で、

NAV 同様に中小企業向けに設計された、財務管理を中心に、人事、サプライチェーン、製造管理などの機能を提供しています。

Microsoft Dynamics GPは、2001年にマイクロソフトに買収されたGreat Plains Software社によって開発されました。その後、Microsoft Dynamics GPとして再リリースされ、北米の中小企業で広く採用されたERPソフトウェアです。

マイクロソフトはDynamics GPを、中小企業の日常的業務を効率化するために、自由な設定変更や簡単なカスタマイズ可能なERPソリューションとしてを提供しました。

Microsoft Dynamics GPの財務管理機能は、総勘定元帳、買掛金・売掛金、キャッシュフロー管理、財務報告などの会計プロセスを効果的に管理することを可能にしました。このソフトウェアは、正確で効率的な財務監視やトレーシングを容易にし、会計基準や規制の遵守を担保を可能にしてます。

Dynamics GPは、財務管理だけでなく、従業員を効果的に管理するための人事機能も備えています。Dynamics GPは、より効率的従業員情報の管理、給与計算、福利厚生の管理、人事業務を実現します。このソフトウェアは、人事業務の自動化と雇用規制の遵守を可能にします。

加えて、Microsoft Dynamics GPのサプライチェーン管理機能により、企業はより効率的な資材調達プロセス在庫レベルの管理、注文処理の改善を行うことができます。Microsoft Dynamics GPは、購買、販売、在庫管理、需要予測などの機能を提供し、企業がさらにサプライチェーン業務を効率的に管理することを可能にします。

最後に、Microsoft Dynamics GPは、他のMicrosoft製品との統合もサポートしており、ームレスなデータ連携と社員同士の共同作業を実現します。Microsoft OfficeやSharePointとの統合により、資料資料文書管理、業務ワークフローの自動化、企業内のコミュニケーション強化が容易に実現できるようにになりました。

マイクロソフトは、Dynamics GPの開発への投資を続け、業務機能の強化やユーザーの使いやすさ向上のために常にアップデートや新バージョンをリリースしてきました。また、パフォーマンスの向上、セキュリティの強化、法規制の変更に対応するためのアップデートも行われました。しかし、2022年10月以降、既に新規機能の開発や投資は停止し、既存のDynamics GPの顧客に対して、Dynamics 365クラウドへの移行を値引き価格にて提供・推奨しています。

Dynamics 365(ダイナミックス 365 )

2016年、MicrosoftはDynamics AX、Dynamics NAV、Dynamics CRMなど、複数のMicrosoft Dynamics製品の機能を統合した新しいクラウドベースのERPソリューションである、Dynamics 365のリリースを発表しました。様々なDynamics製品の機能を統一プラットフォームに統合することで、Microsoftは企業がより効率的に様々な業務を行えるように新しいクラウドベースのトータルソリューションの提供を始めました。

Dynamics 365は、あらゆる規模の企業のニーズや要件に応えるため、機能の拡張性と柔軟性に優れたERPソリューションとして設計されています。この革新的なソフトウェアは、主に財務会計、サプライチェーン、製造、プロジェクト、顧客管理などの重要な分野を網羅する、統合的な様々な機能を提供します。

また最新のDynamics 365の特徴として、人工知能(AI)や機械学習(ML)のような先進技術を組み込んでいることです。AIやMLの機能を取り入れることで、Dynamics 365は企業がデータからより細かい情報分析を行い、業務プロセスを自動化し、より良い意思決定をしやすくしました。これらの最新のテクノロジーにより、企業はパターンの特定、トレンドの予測、イノベーションの推進が可能になり、最終的に業務効率の向上と継続的な成長につながります。

Dynamics 365の導入に伴い、マイクロソフトはERP製品の移行・アップグレードを行い、Dynamics AXはDynamics 365 for Finance and Operations(for Finance and SCM)に移行し、Dynamics NAVはDynamics 365 Business Centralとなりました。

Dynamics 365 Finance and OperationsとDynamics 365 Business Centralは、どちらも同様の様々な業務機能を提供しますが、業種の異なる分野や産業別のニーズにも対応しています。

Dynamics 365 for Finance and Operationsは、エンターープライズ(大企業)のニーズに対応し、主に財務管理、サプライチェーン管理、製造・生産・原価管理など中心に、製造業、卸販売・流通小売業小売など向けに、優れた多数の機能を提供します。このソリューションは、複雑なビジネスプロセスや規制要件を処理するための高度で多様な機能を提供するため、複雑な業務プロセスやグローバル展開を行う企業に最適です。

一方、Dynamics 365 Business Centralは、中小企業向けに設計されています。主に財務管理、サプライチェーン管理、プロジェクト管理、顧客管理など、企業のニーズに合わせた統合的な機能を提供します。Business Centralは直感的なユーザーインターフェイスを提供し、企業は業務の効率化、生産性の向上、データに基づいた意思決定が容易になります。

Dynamics 365 Finance and Operationsは、2019年10月にDynamics 365 Finance and Supply Chain Managementに名称を変更しました。このリブランディングは、財務管理だけでなくサプライチェーン管理の機能まで含む、アプリケーションの統合統合的で実務的な機能をより反映させるために行われました。今回の名称変更では、製品名とその中核となる機能をより密接に連携させ、企業内の財務とサプライチェーン業務の両方を効率化・最適化することを目的としています。

Microsoft Dynamics ERPは、長い道のりを歩みながらあらゆる規模や業種の企業のニーズを満たすことができる強力で柔軟なERPに成長しました。

Axapta、NavisionやGreat Plainから始まりDynamics 365に至るまで、でそれぞれの時代でERP業界をリードし、先進的な機能の開発機能の再開発や強化、ユーザーフレンドリーなインターフェースの導入、AIやMLといった先進技術の統合が行われてきました。

まとめ

今日、Microsoft Dynamics ERPは、あらゆる規模の企業やさまざまな業種の企業にとって、信頼できる統合的なソリューションとして人気です。Dynamics 365は、企業が業務を最適化し、情報分析を行い、持続的な成長のためにデータに基づいた意思決定のサポート可能にしています。Dynamics 365は、クラウドベースの拡張性、柔軟なカスタマイズオプション、充実した様々なシステムとの統合機能などを活用し、プロセスを最適化し、競争の激しいビジネス環境において他の企業と差別化することができます。

マイクロソフトがDynamics ERPの開発に投資を続けている中でユーザー企業たちは、エンタープライズリソースプランニング(ERP)のさらなる進化とイノベーションを期待することができます。Microsoft Dynamicsのパワーを取り入れることで、企業は卓越したオペレーション(運用)とデジタル時代の成功に向けた変革の旅に出、そして目標に到達するることができます。

Dynamics 365の機能と、そのアプリケーションがビジネスにどのような利益をもたらすかについて、ご興味がある方(企業様)は今すぐご相談ください。