ERPの内部統制強化と監査対応: Dynamics 365での導入例

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経営の透明性や組織の管理責任が益々問われる昨今では、本社主導によるグローバル視点での内部統制強化が実行され、日常業務を抱えながら各種対応に追われている米国駐在員の方も多いかと存じます。

今回は、統制要件や監査基準を満たすと同時に、業務効率向上にも繋がるシステムの活用法を、MicrosoftのDynamics 365を例にご紹介します。

課題1

見積書や契約書、検収書などの証憑が紙で管理されている、または各担当者が個別に管理している。そのため、会計監査時に証跡が見つからない、もしくは発生元情報の収集に多くの時間が掛かるという問題が発生している。

改善方法:  単一システムによる情報のドリルダウン

経理業務と販売・購買業務などが別システムで管理されている場合、経理システム側から発生元情報(受注や発注情報など)を透過的に見ることが出来ないため、情報の突き合わせや証跡の特定に多くの手間を要します。一方Dynamics 365のように、経理、販売、購買といった業務を単一システム内で一気通貫して管理する場合、例えば仕訳の情報から発生元情報まで遡る(ドリルダウンする)ことが出来るため、販売・購買などのオーダー詳細や入力者の情報まで、経理担当者が容易に特定することが可能です。また、製造業の場合は、製品ロット番号、消費期限、仕掛品のステータス(WIP)、原価情報なども容易にトレースすることが出来ます。

さらにDynamics 365では、便利なドリルダウン機能などを活用し、署名後の見積り、契約書、検収書などといった証憑を各オーダーに添付出来るので、販売・購買担当者がオーダーにドキュメントを添付すれば、監査時の証跡収集・確認作業が大幅に軽減できます。

契約書の添付がなければ受注オーダーを完了できない、検収書がなければ売上を立てられない、といった制御をうことで、統制を強化することも可能です。

課題2

社内の申請・承認手続きが体系化・標準化されていない。または、承認ルールは存在するものの、メールや紙での決裁となっており、承認案件の履歴管理が煩雑になっている。特にアメリカでは、現地社員へのコンプライアンス強化が徹底されておらず、使途不明の備品購入などが発生している。

改善方法:  ERPに実装されているワークフロー機能の活用

Dynamics 365では、多種多様な業務に対応するワークフロー機能が実装されています。

ワークフローを組み込むことで、一定金額以上の見積りは営業マネージャーの承認がなければ顧客提示出来ない(見積り書を印刷出来ない)、購買部門長の承認がなければ購買オーダーを立てられない、といった仕組みを構築することも出来ます。もちろん、承認履歴や否決時のコメントなどの証跡もシステムに残るので、規定されたルールに従っているかを事後にチェックすることも可能ですし、監査時に決裁案件の詳細を容易に検索・特定できます。

[Dynamics 365 Business Centralのワークフロー機能]
Dynamics 365 Business Central Workflow

業務標準化やコンプライアンスのガイドライン作成は日本本社で徹底されているものの、企業文化や個々人に差がある海外現地法人への徹底に苦労をされている企業様も多く見受けられます。アメリカの業務に対応し、監査対応や統制強化の機能が既に盛り込まれているDynamics365のようなシステムを導入することで、システムを通じた統制強化を実現することも一案かと思います。

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