Dynamics AX からDynamics 365 へのアップグレード

happy_two_men_looking_at_a_tablet

AXから Dynamics 365 への移行メリット

2002 年のリリース以降、中~大規模企業を中心に展開されていたDynamics AX が、正式にサポート終了、販売終息を迎えました。新規のお客様向けの後継製品として、MicrosoftからDynamics 365 for Finance and Supply Chain Management (以下、本ブログ内ではDynamics 365と表記) が発売されており、現在AXを利用中の企業においても、速やかな移行が推奨されております。 Dynamics 365はAXの機能を継承し、Microsoftがブランド名を変更したクラウド型の製品となります。AX利用ユーザは従来の機能を継続利用でき、加えて定期的に追加される新機能を活用することで、業務効率や可視性の向上、運用の自動化、省力化を実現することが出来ます。

AX利用企業の多くは、後継製品であるDynamics 365を既に目にしたことがある、或いは実際に移行を検討したことがあるかもしれません。一方、同製品にアップグレードする明確な理由付けができず、移行を躊躇するケースもあるかと思います。

長期に渡り提供実績があるAX は、成熟した信頼性の高いシステムであり、業務の中核として利用している企業も多いのは事実です。しかしながら、サポート終了後にシステムを継続利用することは運用上のリスクが極めて高く、後継製品であるDynamics 365 への早急な移行が求められます。

今回のブログでは、AXユーザがDynamics 365に移行した場合に享受できる、様々なメリットをご紹介していきます。

AXとの比較におけるDynamics 365の優位性

Dynamics 365はAXの機能を踏襲していますが、クラウド型ERPとしての大幅なプラットフォーム変更に加え、業務改善を支える多くの新機能や改良点が追加されており、AXから飛躍的な進化を遂げています。以下、Dynamics 365の特徴やAXからの主要な変更点を、いくつか見ていきたいと思います。

Microsoft Dynamics AX 2012 R3 Overview Demo - YouTube

Dynamics AX 2012 

Dynamics 365 F&SCM 

クラウド型ソリューション

特筆すべき変更点の 1 つとして、Dynamics 365がクラウド型のERPであり、AXのようにサーバを自社で保有したり、メンテナンスをする必要がないことが挙げられます。サーバ環境は全てMicrosoftが提供し、同社がメンテナンスやセキュリティ対策を行うため、ユーザはインターネットさえあればDynamics 365を利用することが出来ます。また、ERPのアップデートもMicrosoftが自動で行うため、AXのようにサポートが切れたり、担当ベンダが多大な工数を掛けて次期バージョンにアップグレードする必要がなくなります。総じて、メンテナンスコストや管理工数を大幅に削減することができます。

親しみやすいユーザーインターフェースと操作性

Dynamics 365は、ブラウザ上で操作するウェブアプリケーションとなっています。昨今、世の中の多くのシステムやアプリケーションがウェブベースで提供されているため、ユーザにとって非常に親しみやすく、直感的に操作性を把握できるようなインターフェースになっています。これにより、システム移行時のストレスが減り、各ユーザが短期間でDynamics 365を使いこなすことが可能となります。

Microsoft製品とのさらなる連携

Dynamics 365は、Microsoft 365、Power BI、Azure、Dynamics CRMなど、他の Microsoftクラウド製品とシームレスに連携することが可能となっています。他のシステムと連携することで、単純な機能拡張だけではなく、各業務や部門間でデータの相互共有や可視化が進み、生産性の向上に大きく寄与します。もちろん、他部門と共有すべきでないデータのアクセス制限を行う等、柔軟な設定も可能です。

高度な分析とレポーティング

Dynamics 365は、Power BI とのシームレスな統合を含む、高度な分析・レポート機能を提供しています。システム内に格納されている膨大なデータを、必要な時に必要な粒度で抽出し、経営判断に求められる多角的な分析を行うことができます。AXのレポート機能は数字データをベースにしたものでしたが、Power BIと連携したDynamics 365のレポート機能は、グラフやマップ等の視覚的なデータを用い、迅速かつ効果的な意思決定を強力にサポートします。

パワフルな検索機能

Dynamics 365では、必要な情報を簡単に見つけられる、強力な検索機能が導入されています。ユーザーは現在のトランザクション画面やシステム内の場所に関係なく、キーワード検索を用いて必要な情報まで即座に辿り着くことが出来ます。また、キーワード入力時点で検索候補が表示されるので、全文を入力しなくてもよく、業務処理の省力化、スピード向上を図ることが出来ます。

堅牢なセキュリティ

サイバー犯罪による被害は年々増加しており、多くの企業が対応に追われていますが、AXのように自社でセキュリティ対策を実施する場合、多くのコストと労力が発生します。Dynamics 365を導入すると、Microsoftがサーバの管理や日々のセキュリティアップデートを実施しますので、厳格なデータ保護規制に準拠した環境の中で、安心してシステムをご利用頂くことが出来ます。Dynamics 365に格納されているデータは暗号化されており、また多要素認証(Multi-Factor Authentication)なども利用できるため、潜在的なセキュリティリスクを軽減し、自信を持ってデジタル資産を活用頂けます。

業界固有の機能

Dynamics 365は、AX 2012 のより一般的なアプローチと比較して、小売や製造などの特定の業界のニーズに合わせてカスタマイズされた、業界固有の機能とソリューションをご提供します。また、世界中のMicrosoftパートナーが開発した業種特化型アドオンを実装することで、各企業の固有要件を更に深く満たすことが出来ます。

革新的なAIモデルの採用(Copilot)

Dynamics 365にはAI機能が実装されており、人間の判断をアシストする多くの機能が組み込まれています。キャッシュフローの正確な予測、お客様の支払い予測、予算提案の効率化や財務管理の高速化など、これまで多くの人手を要していた作業をAIが行うことで、より正確かつ瞬時に意思決定を行うことが可能となります。

継続的なイノベーション

AXに新機能を追加する場合、新バージョンへのアップグレードを行うか、カスタマイズを個別開発する必要がありましたが、Dynamics 365ではMicrosoftが定期的にシステムのアップデートを自動で行い、新機能や法規対応、不具合の修正等が自動で適用されます。今後AI領域などで更なるテクノロジーの進化が期待されますが、Dynamics 365ユーザは常に最先端のシステムを利用することが可能となります。新機能は個別に適用する時代から、自動で配信される時代に遷移していると言えます。

アップグレードプロセスの全体概要

全体的なアップグレードプロセスは、分析、移実行・設定/開発、検証という3つのフェーズに分けることができます。

各フェーズにおけるタスク概要図

フェーズ1: 分析

このフェーズでは、現行のカスタマイズや3rd Party製品との互換性チェック、移行不要な機能(カスタマイズ)の洗い出し、移行対象データや機能の決定、アップグレード時のスコープの設定などを行います。また、現行の運用における問題点や改善要望をユーザからヒアリングし、Dynamics 365に新たな機能を追加する場合には、詳細な要件分析や設定、工数の算出なども行います。

トライアル用のサブスクリプションがあるか確認

Sign up for preview subscriptions

アップグレードアナライザーの実行

アップグレードアナライザーは、AXをよりスムーズかつ効率的にアップグレードするために、Microsoftが提供している移行・アップグレード支援ツールとなります。このツールを用いて、以下のようなタスクを実行します。

データのクリーンアップ – このプロセスでは、不要なデータを安全に削除するために、各機能などへの影響をチェックします。データの種類ごとに、クリーンアップの影響についての説明が提供されます。

データベースの最適化 – ツールを用いてデータベース(SQL)の構成を確認し、アップグレードプロセスが効率的に実施されるよう、最適化を行います。

非互換の機能を特定 – Dynamics 365で使用できない、AX内の現行機能を特定します。システム間における機能ギャップを早期に特定することで、適切な代替案を検討することができます。

Upgrade from AX 2012 – Plan by using the Upgrade analyzer tool

コードアップグレード工数算出ツールの実行

コードアップグレード工数算出ツールの実行します。またコードアップグレードに要する工数を算出するのにも役立ちます。

Upgrade from AX 2012 – Estimate effort by using the Code upgrade service.

デモ環境の準備

デモ環境は、デモデータ (各社固有のデータではない) と標準コード (カスタマイズなし) を含む、事前に構成されたシステム環境です。Dynamics 365で提供されている新機能や、AXとの機能ギャップを評価・検証するために、デモ環境を準備することが推奨されています。Azure環境もしくは独自のハードウェア上で実行することが可能です。

Upgrade from AX 2012 – Deploy a demo environment fo

Upgrade from AX 2012 – Deploy a demo environment for analysis.

プロジェクト計画の作成

Microsoftから提供されているテンプレートをベースに、アップグレードのプロジェクト計画を作成します。分析フェーズを通して確認された実行タスクや、機能ギャップに対するソリューション、またプロジェクト中に実施するテストの詳細も含めた内容の計画が必要となります

フェーズ2: 移行・設定/開発

このフェーズでは、分析フェーズで計画したタスクを実行します。実際にはこのフェーズに進む前に、Dynamics365のサブスクリプションを購入し、アップグレードの作業に必要なリソースを準備する必要があります。

コードアップグレードの実施

分析フェーズで計画された内容に沿い、AXのコードをDynamics365用にアップグレードします。この時点から、業務上どうしても必要な緊急の変更を除き、現行のAXへのコードや設定などの変更を全て停止する必要があります。もし、コードアップグレード後にAXの変更を行った場合、新しいコードは手動で移行する必要があります。

新規機能の設定・開発

分析フェーズで実施したFit & Gap分析をもとに、新規で用意が必要と判断された機能の設定・開発を行います。

データアップグレード(開発環境)

コードアップグレードが完了したら、最初のデータベースの最初のアップグレードを開発環境上で行い、この段階で発見された問題の修正やデバッグを行います。同環境は、主にシステムベンダーの開発者(デベロッパー)等が、開発や技術的な確認を行う目的で利用します。

Data upgrade in a development environment

データアップグレード(サンドボックス環境)

開発環境でのデータアップグレードが完了し、問題修正を行った後、同じプロセスをサンドボックス(テスト)環境で実行します。サンドボックス環境は、アップグレードされたデータとコードを使用して、ビジネス実際のキーユーザーやFunctional Consultantが、業務プロセスに沿ったシステム確認・検証を行える環境です。

Data upgrade in a sandbox environment

Upgrade from AX 2012 – Data upgrade in sandbox environments.

フェーズ3: 検証

このフェーズでは、アップグレードされたコードやデータが実装された環境上で、より本番に近い状態で検証・テストを行います。アップグレードされた環境が当初の要件・仕様通りに機能することを確認するための検証・テストに加え、本稼働を迎えるために必要な準備も行います。

·       Upgrade from AX 2012 – Post-upgrade tasks

·       Upgrade from AX 2012 – Cutover testing (Mock cutover)

機能テスト(結合テスト)

まず主要なビジネスプロセスの機能テストを充分に行い、エラーやバグが認められた場合には、修正の上再テストを行います。テストの範囲や実行するトランザクション、テスト結果などは、ドキュメント化して管理します。テストの範囲は、AXから引き継がれたDynamics 365の機能、カスタマイズ、3rd partyモジュールに加え、新たに追加された機能(プロセス)を含みます。

Upgrade from AX 2012 – Functional test passes.

ユーザ受入テスト

トレーニング実施後、各ユーザにて受入テストを実施します。テストシナリオはユーザ側で作成し、業務プロセス通りに新システムが機能しているかを様々な確認・検証します。テスト時のエラーやバグはリストで管理し、導入ベンダー側が随時修正対応を行います。

操作に関する質問なども随時サポートし、各ユーザが自信を持って本稼働を迎えられるよう充分なテストとシステムリリースの準備を進めていきます。

Validate: Prepare for go-live.

本稼働(本番アップグレード)

検証プロセスが全て終了し、残課題がないことが確認出来たら、本稼働判定及び本稼働日の最終決定を行います。この段階では、検証済み環境からのシステム構成やコード変更等は、致命的なエラー修正などを除き一切凍結されます。

テストアップグレードや検証フェーズで確認された内容に基づき、本番環境で最新の終のデータへの移行を最終的にアップグレードを行い、新しいDynamics 365をカットオーバーします。

もっと読む: Upgrade from AX 2012 – Cutover process (Go live)

アップグレードにおける一般的な質問事項

Dynamics365はAXの正式な後継製品ですが、ERPという構造変更を伴う大きなERPシステムのアップグレードになりますので、懸念や不安を持たれるお客様も多くいらっしゃいます。そこで、弊社によく寄せられる懸念・質問事項につき、回答形式で纏めさせて頂きます。

データ移行

質問: AX内の既存データは Dynamics 365 にどのように移行されるか?データの損失や互換性の問題は発生するか?

回答:Microsoftから提供されているツールを使い、クリーンアップできるデータを事前に特定し、関連する必要なデータのみが移行されるよう準備を行います。 その後のデータマッピングおよび変換プロセスに基づいにて、AXのデータフィールドをDynamics365の対応するフィールドに一致させ、互換性を確保しながら随時進めてしいきます。最終的な切り替えの前に、データの正確性と整合性を検証するために、複数回のテスト移行を実行します。

トレーニング

質問: Dynamics 365 を使用するには、どの程度のトレーニングが必要か?

回答: Dynamics365にはAXの機能が引き継がれているため、全く別のシステムに移行する場合と比較し、ユーザの混乱やストレスが少なくスムーズに切り替えを行うことができます。一方、基本的にオンプレからクラウド型ERPの変更となるため、ブラウザでの操作となることや、最先端の新機能が追加もされているためことから、やはりシステム全体を通したの主要機能に対してのユーザトレーニングは必要となりってきます。各部門(ロール)毎にトレーニングセッションを設け、各キーユーザー向けに重点的なトレーニングを行うことで、新システムを熟知理解しているた人材リソースを早期に育成し、組織内で問題解決が出来る体制を整えることが出来ます。

既存システムとの連携

質問: Dynamics 365 は既存の別システムなどと連携できるか?

回答: Dynamics 365 は、さまざまなシステムやアプリケーションとシームレスにデータ連携できるように設計されています。また、米国内で広く利用されている外部ソフトやサービスとも連携できるよう、多くのツールが提供されています。プロジェクトの最初に行う分析フェーズでは、既存システムの仕様や連携方式、フィールドマッピング、Dynamics 365で巻き取れる範囲などを詳細に分析し、その後必要な開発や連携テストを行った上で、システムやデータ連携を行えます。

カスタマイズの移行

質問: 現在のAXのカスタマイズはどうなるか(Dynamics 365 に移行できるか)?

回答: Dynamics 365に移行可能です。Microsoftから提供されているコードアップグレードツールを利用することで、多くのAXのカスタムコードを Dynamics 365 のフォーマットに自動変換し、互換性の問題があれば事前に特定・修正することが出来ます。また、AX内のカスタマイズがDynamics 365の標準機能で代替できるケースもあるため、分析フェーズにおけるFit & Gap分析でそのようなケースを洗い出し、カスタマイズの再評価やシステムの最適化を行っていきます。

継続的なサポート

質問:アップグレードプロジェクトが完了後も継続的なサポートを受けることはできるか?

回答: 弊社では、トラブルシューティング、ユーザトレーニング、機能拡張など、運用開始後の広範なサポートをサポートメンバーとプロジェクトメンバーの両方が提供しています可能です。実際、アップグレードプロジェクトの完了は、お客様にとって新システムでの業務開始を意味しており、各ユーザがシステムに慣れ、業務改善が実現されるよう、継続したサポートが必須であると考えています。弊社では、トラブルシューティング、ユーザトレーニング、機能拡張など、運用開始後の広範なサポートを提供しております。

AX から Dynamics 365へのシームレスな移行

Dynamics AX から Dynamics 365 for Finance and Supply Chain Management (F&SCM) へのアップグレードに関して、米国マイクロソフトからパートナー・オブ・ザ・イヤーを受賞したCalsoft Systems ではクラウドシフトという移行メソッドと実績面からお客様の信頼をいただいています。。ERP システム、統合、カスタマイズの分野で数十年の経験を持ち、ERP の移行や実装に対する当社のアプローチは、企業の業務効率化と継続的な成長をサポートするために、多くのAXユーザー企業にご利用いただいています。

Microsoft ゴールド パートナーとして、当社の実績と改善への取り組みは、95% を超える顧客維持率にも反映されています。Dynamics AX と Dynamics 365 に関する専門知識により、初期計画から最終的な実装、その後のサポートまで、アップグレード の全プロセスにおいて確実に実行していきす。。

Calsoft Systems は、Dynamics AX および Dynamics 365 F&SCM へのアップグレードに関して豊富な経験を持っています。アップグレード、新規または 再実装を検討している場合、またはビジネス コンサルティングをご希望の場合は、Dynamics AX および Dynamics 365 F&SCM へのアップグレードに関して豊富な経験を持った当社までご連絡ください。当社は、ERP システムについて十分な情報に基づいた決定を下すために必要な情報とサポートを提供します。

お気軽に (1-888-838-8422 までお電話いただくか、またはinfo@calsoft.comまでメールにて)でお問い合わせください。Dynamics AX のアップグレードに関する詳細情報や、Dynamics 365 への移行を成功させるための実用的な手順とツールをご案内いたします。ERP システムの潜在能力を最大限に活用してビジネス目標を達成できるようお手伝いいたします。

Dynamics AX から Dynamics 365 にアップグレードする準備はできていますか?

Calsoft Systems の Dynamics 365 CloudShift を使用するとの利用で、Dynamics AX から Dynamics 365 Finance & Supply Chain Management にスムーズシームレスに移行できます。業務を最適化し、成長をサポート促進するように設計された最新のクラウドベースの ERP プラットフォームのパワーを体験してみてください。

さらに読む:

マイクロソフトERPの進化

Cloudshift AXからFSCMへ – Calsoft Systems | ERP, Network, IT Services

クラウドERPソフトウェアの目的やメリットとは

大企業が Dynamics 365を選択する理由